自筆証書遺言は危ない?
自筆証書遺言は、1人でいつでも手軽に書くことができるし、費用も掛かりません。
遺言書を書こうと思い立ったら、すぐにでも作ってみることができます。
ただし、書いたものが法的に有効な遺言書であると認められるためには、法律で決められたルールに則ったものでなければなりません。それをよく理解した上で作らないと無効になってしまうだけでなく、かえって相続人に迷惑をかけてしまうことにもなりかねません。
よくある、危険な自筆証書遺言の例をご紹介します。
つっこみどころ満載の自筆証書遺言
遺言書は書き方のルールが決められています。
自分で書く、正しい日付を記す、印鑑を押す、など。また、訂正の方法にも決まりがあります。これらが守られてないと、その遺言書は無効となります。
また、自筆であり、誰も本人が書いたことを証明できない点も、疑われやすいところです。もし遺言書の内容に納得がいかない相続人がいたら、何とか無効にしようとありとあらゆる突っ込みをいれるかもしれません。
「これはうちの親父の字じゃない!」
「三文判買ってきて押しただけだろ?」
「誰かに脅されて書かされたんじゃないのか?」
「この字は間違ってる」
「これ書いたとき、もうボケてたじゃないか」
「字が汚くて読めん」
などなど、いくらでも攻撃材料があります。
相続人のひとりに弁護士がつけばこれに反論するのは並大抵のことではありません。
遺言の言葉は正確に
また、内容についても、言葉の使い方ひとつにも注意が必要です。
法的に正しい言葉で書く必要があります。大学に入ってすぐの頃に、法律用語について「日本語とは別の言語を学ぶつもりで勉強してください」と言った教授がいらっしゃいました。そのくらい、法律用語は普段の言葉使いとはかなり異なります。厳密に意義、要件、効果が定められているのです。
一般の方が書かれた遺言書の中には、法的な意味が不明だったり、自分にしかわからない表現で書いてあったりして、財産や受贈者を特定できないものが多くあります。
「財産を全部任せる」
「西の畑は長男に継がせる」
「かわいい孫にあげる」
これらの言葉は、気持ちはわかりますが、法的には無効なものになってしまう可能性があります。
「任せる」は遺贈を意味する言葉ではないとした判例もあります。
「相続させる」と「遺贈する」の違いで、その後の手続に影響することもあります。不動産の名義変更で、登録免許税の価格に差がでることもあります。
また、財産の情報や相続人の名前などは、登記簿や戸籍、住民票の通りに書いて、客観的に特定できるようにしなければなりません。どの孫がかわいいのかは本人以外にはわかりません。
一人でできるけど、一人があぶない
自筆証書遺言は誰にも知られずに一人で書くことができます。
それに対して公正証書遺言は、遺言者が口述したものを公証人が書面にするという方法で作成する遺言書ですので、専門家の目が必ず入ります。それゆえ無効になる可能性はほとんどありません。
内容をなるべく知られたくないのはわかりますが、無効になったら意味がありません。
どうしても自筆証書で作りたい場合は、ぜひ専門家を利用してください。行政書士などの専門家には守秘義務があるので内容が漏れることもありません。
当事務所も、自筆証書遺言の確認・添削サービスをご用意しています。専門家である行政書士が遺言の形式や内容、誤字脱字に至るまでチェックします。自筆であっても、あなたの思いを確実に実行できるような遺言書にしましょう。