配偶者の相続分が増えるかもしれません
前回の記事でチラッと触れましたが、現在、民法の相続関係部分についての見直しが法制審議会の部会で進められていて、その中間試案が公開されています。
このなかで大きなテーマのひとつが配偶者についてです。
具体的には相続時の配偶者の居住権の保護や配偶者の相続分の引き上げなどです。
簡単にまとめておきます。
1、配偶者の居住権の保護
現状、亡くなられた方が所有していいた建物に配偶者が居住していた場合、相続や遺贈などをきっかけに退去や処分を求められたりする恐れがあるため、そのような配偶者を保護することが目的です。
(1) 短期居住権の新設
相続発生時、亡くなった方が所有していた建物に居住していた配偶者は、遺産分割が終わるまで、無償で居住できることにする。
(2)長期居住権の新設
遺産分割協議や遺言、裁判所の審判などで、終身又は一定期間、配偶者に建物に居住できる権利を取得させることができるようにする。
2、配偶者の法定相続分の見直し
現行の法定相続分について配偶者の貢献が十分に反映されてないのではないかとの批判から見直しが検討されているものです。2つの案が示されています。
(甲案)
被相続人の財産が婚姻後に増えた場合、その割合に応じて配偶者の相続分を増やす。
(乙案)
婚姻後、20年又は30年を経過したら、届出等により、法定相続分を増やす。
例)子と配偶者が相続人の場合 配偶者2/3 子1/3 (現行1/2ずつ)
甲案は、増加額や具体的相続分の算定が、寄与分と同様に複雑で、ちょっと想像するだけでうんざりしてしまいます…。乙案はそれに比べればわかりやすいですが、届出の手続きや公示情報の確認、遺言作成時に遺留分の検討が難しくなるなど、今より手続きが煩雑なものになることは否めません。
この試案では、そのほかに可分債権の取り扱い、自筆証書遺言の方式、遺言執行者の権限の明確化、遺留分制度の見直し、相続人以外の者の貢献を考慮するための方策などなど重要な論点が目白押しです。
また、この改正により遺言の重要性がより高まるのではないかと思います。
改正までにはまだ時間がかかりそうですが、少しずつ情報を整理してお知らせしたいと思います。