「下町ロケット」と「かばん屋の相続」

 

暮れもせまり、今年も残すところあと10日ほど。

今年は暖冬だそうですが、寒がりの私にはすでに十分堪える寒さです。

 

そんな中とっても熱く、体温を上げてくれたのが、

ドラマ「下町ロケット」。

いやー、面白かったです!

こんなに毎週のように泣けたドラマは久しくなかったように思います。

最終回までたっぷり楽しめました。

視聴率もよかったようで、やはり、浮き沈みがはっきりした

勧善懲悪の物語は人気がありますね。

 

水戸黄門や大岡越前のような時代劇が

長く愛されたのも納得です。

 

「ロケットをなめるな!!」

 

と、杉良太郎が部下に一喝したとき、

後ろに桜吹雪が舞うのが見えたのは

私だけはなかったはずです(笑)。

技術者出身の経営者として見事なお裁きでした。

 

さて「下町ロケット」や「半沢直樹」の原作者は池井戸潤さんです。

彼の作品のなかには、相続を扱ったものもあるんです。

私が読んだのは「かばん屋の相続」という短編。

 

 

ある実在するかばん屋さんの相続トラブル、お家騒動がモチーフと言われています。

社長である父親が急逝し、残された二人の兄弟の間で起こった騒動が

融資元の銀行員の目線で描かれています。

 

ネタばれするので詳しくは書きませんが、

ストーリーのカギを握ったのが相続放棄と遺言書でした。

先代の思いを実現し、築いてきた家業を残していくための

大きな武器として使われています。

おかげで池井戸作品らしい、

読者もスッキリする納得の結末を迎えることができています。

 

ただ気になるのは、作中で作られたとされる遺言書は

民法に定められた方式に従ったものでない可能性があること。

その遺言書は弁護士がワープロで作ったと記述されています。

弁護士が父親の病床で遺言の内容を聞き取って、

それを書類にして内容を確認の上、署名した、と。

 

この遺言書は当然、自分で書く「自筆証書遺言」ではなく、

弁護士作成ですから、公証人が作る「公正証書遺言」でもありません。

公証人の関与は描かれていないので「秘密証書遺言」でもないでしょう。

 

可能性があるのは、特別な方式として認められている

「一般危急時遺言」。

死亡の危急に迫ったものが遺言の趣旨を口授して

それを証人が筆記して作成するものです。

ですが、この遺言には証人3人以上が必要で、

そのような記述もありません。

 

したがって、この遺言書は遺言としての法的な効力を持たない

無効なものである可能性があるのです。

 

もっとも、作中では、この遺言書が偽造かもしれないという疑いを持ったうえで、

遺言の内容通りの遺産分割協議を成立させており

登場人物たちも遺言書の効力自体は争ってませんので

目をつむってお話を楽しむことにしましょう。

 

ちなみに、モデルとなった現実の騒動は、

2通の内容の異なる自筆証書遺言が存在し、

その効力が裁判で争われており

スッキリどころか8年も続く泥沼の争族に発展してしまいました。

詳しい内容はネットにいくらでも記事があがっているので

興味のある方は検索してみてください。

自筆証書遺言の危うさや、正しく遺言書を作ることの大切さが

わかってもらえるのではないかと思います。

 

日々のこと

Next article

新年のご挨拶