斜線が引かれた遺言書は有効か?

 

ようやく寒くなってきましたね。

 

さて、いきなりですが、遺言者が亡くなった後、

発見された自筆証書遺言に斜線が引いてあったら

この遺言書は無効でしょうか、有効でしょうか?

 

 

先日、そんな遺言書についての最高裁判所の判決が出されました。

結論から言うと、この事件においては無効であるとされました。

 

そもそも、遺言書は、遺言者がいつでも

遺言の方式に従って撤回することができます(民法1023条)。

「以前書いた遺言書を撤回する」という新たな遺言書を書いておけば

元の遺言はなかったことになるのです。

 

また、そのような撤回する旨の遺言がなくても、

遺言者が故意に遺言書を破棄したときには、

遺言を撤回したものとみなされます(民法1024条前段)。

 

今回争われたのはこの「破棄」の部分。

自筆証書遺言に斜線を引く行為が

「遺言書を故意に破棄した」に当たり、

撤回したものとみなされるのかどうか。

 

原審は、

斜線が引かれた後も遺言書の元の文字が判読できる状態である以上

「故意に遺言書を破棄したとき」には該当せず、

遺言を撤回したものとみなされないため有効だとしていました。

 

しかし、最高裁は

「遺言書に故意に本件斜線を引く行為は,

民法1024条前段所定の「故意に遺言書を破棄したとき」に

該当するというべきであり,これにより遺言者は本件遺言を

撤回したものとみなされることになる」

として、この遺言は無効であると判断したのです。

 

実際には、赤色のボールペンで遺言書の文面全体の

左上から右下にかけて斜線が引いてあったそうで

「それは普通、全体の効力を否定する意思でする行為でしょ」

というのがその判断理由だったようですね。

 

ということは、例えば

鉛筆でうっすらとした斜線が引いてあった場合などには

同じ結論にはならない可能性もありますね。

 

したがって、この判例からの教訓としてはやはり

「きっちり撤回!しっかり破棄!」

ということ。

 

撤回するのなら、正しい遺言の形式で間違いなく撤回する。

破棄するのなら、シュレッダーにかけるなり、燃やしてしまうなりして

争いようのない状態にしておくということですね。

 

ちなみに、公正証書遺言の場合は

手元にある謄本を破棄しても撤回とはみなされません。

必ず新たな遺言書で撤回しなければなりませんのでご注意を。

 

裁判例情報
平成26(受)1458 遺言無効確認請求事件 平成27年11月20日 最高裁判所第二小法廷